生体医工学
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VR視聴時の主観的不快感に関連する生体活動の検出
章 斯楠小野 弓絵
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 131

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抄録

【目的】ヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、仮想現実(VR)を体験する装置として普及しているが、使用中に頭痛や吐き気などのVR酔いを経験することがある。本研究ではVR酔いの発生を生体信号から判別するバイオマーカーの探索を目的として、VR視聴時の不快感に伴って現れる脳波と心電図の特徴について検討した。

【方法】若年健常被験者5名に対し、HMD (HTC VIVE)を用いてCGで作製された30秒間のVR映像を座位にて視聴させた。視聴中の主観的不快感の変化をアナログ圧センサにより取得し、CG視聴中脳波のデルタ、シータ、アルファ、ベータ波帯域強度と心臓自律神経指標の変化を算出し、相関解析を行った。また、映像の視聴後にsimulator sickness questionnaire (SSQ)を取得してVR酔いの程度を評価した。

【結果と考察】VR酔いが発生した被験者(SSQ > 40)において、主観的不快感の増減と統計的に有意な相関関係を示した生体指標として、頭頂葉のデルタ波帯域活動、中央部(Cz)・頭頂葉・後頭部のベータ波帯域活動が検出され、いずれも負の相関を示していた。心臓自律神経活動と主観的不快感との相関関係は確認できなかった。自己の空間・運動知覚の情報統合が行われる頭頂葉の脳波活動が、VR酔いのバイオマーカーとして有用である可能性が示された。

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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