生体医工学
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高圧下での細胞動態イメージング
森松 賢順藤田 彩乃寺町 一希成瀬 恵治
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 176

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抄録

組織や器官を構成する細胞は、ずり応力、圧力、伸展圧縮等の機械刺激を受容し、細胞自身や組織の機能維持に利用している。 特に、軟骨組織や歯周組織等は、歩行や咬合等の日常生活に伴った圧力に常にさらされているが、これらの組織に存在する細胞の圧力に対する受容応答メカニズムの解明には未だ研究の余地があった。その理由は、高圧下での細胞、分子レベルの計測方法が極端に欠如しており、圧力による生体への影響に関する研究の進捗が遅れていたためである。そこで本研究では、高圧負荷システムを用いた、細胞の圧力受容応答機構の解明を目的とした。開発した圧力顕微鏡下において、歯根膜細胞においては、転写因子の一つであるfork head box protein(foxo)が細胞質から核への移行が観察された。減圧後は、foxoが核から細胞質への移行が観察され、この核移送は可逆的な運動と考えられる。一方、軟骨細胞においては、転写因子の一つであるSmadが加圧により核への移行が観察されたが、減圧後も核内に局在することが観察された。この結果は、加圧による転写因子の核への移送を加速させ、軟骨細胞の細胞外マトリクスタンパク質の精製上昇に関わると考えられる。歯根膜組織への圧力の指標は、機械刺激下での歯周組織の恒常性や、歯周組織リモデリング機構の研究を加速させ、軟骨組織への圧力受容応答メカニズムの知見は、高齢者に多く見られる変形性膝関節症のメカニズムの解明に繋がる。

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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