生体医工学
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機械負荷に対する防御装置としての糖鎖と機械生物学的な意義
金川 基
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 197

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抄録

 骨格筋は絶えず筋収縮というメカニカルストレスにさらされる組織であり、それゆえに機械的な細胞障害や運動負荷に適応すべき仕組みを備える必要がある。細胞外マトリクス受容体であるジストログリカンは、基底膜と細胞骨格を結ぶ分子で、糖鎖修飾がマトリクス結合活性に必須とされる。糖鎖の異常は筋ジストロフィーなどヒト疾患につながることが知られている。我々は、ジストログリカンに修飾される糖鎖の中から、リビトールリン酸という新規の翻訳後修飾体を発見し、これがマトリクス結合性糖鎖の生合成に重要であることを見出した。また、リビトールリン酸を欠落した筋は機械的負荷に対して脆弱であることも明らかになってきた。つまり、リビトールリン酸は機械的負荷に対する細胞膜強度の維持に重要であることが示唆される。

 本シンポジウムでは、我々のAMED-CRESTプロジェクト「機械受容応答を支える膜・糖鎖環境の解明と筋疾患治療への展開」についても紹介する。本計画では、機械感知・応答の分子機構を明らかにすることで、ヒト筋疾患の予防や治療に有効な戦略の開発を目的としている。

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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