生体医工学
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メトロノミック光線力学療法に向けた埋め込み型発光デバイスの開発
藤枝 俊宣
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 206

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抄録

光線力学療法(PDT)は、光増感剤が集積した腫瘍に光を照射することにより発生する活性酸素を利用して、がんの細胞死を誘導する治療方法であり、病変選択的な治療法として臨床応用されている。最近では、従来型のレーザー光源と比べて、低強度・長時間の光照射が可能なPDT(メトロノミックPDT)が提唱されており、体内埋め込み型デバイスの開発が期待されている。一方、腫瘍と光源の位置が少しでもずれるとPDTによる治療効果が得られないため、生体内に長期間光源を固定する技術の開発が望まれている。この点において、柔らかい生体組織に対して、硬質な電子素子(例: LED)を固定するためには、生体と電子素子の界面における力学特性を制御する必要がある。本研究では、無線給電にて作動可能なLEDチップを、高分子ナノ薄膜(膜厚:約600 nm)にて被覆することで、生体内にシールのように貼付可能な埋め込み型発光デバイスを開発した。具体的には、ポリジメチルシロキサンからなるナノ薄膜に、生体模倣型の接着性高分子であるポリドーパミンを修飾することで、生体接着性を有するナノ薄膜を調製した。ナノ薄膜にて被覆された発光デバイスを担がんモデルマウスの皮下に埋め込み、光増感剤(フォトフリン)を投与後に10日間連続作動させたところ、従来型PDTの約1000分の1の光強度(<100 μW/cm2)で抗腫瘍効果を得ることに成功した。

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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