生体医工学
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総合滅菌管理システムにおけるICTの利活用と投資回収率
笠松 眞吾石本 洋子小久保 安朗
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 209

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抄録

【背景】福井大学医学部附属病院では、2014年に総合滅菌管理システムを導入した。先行事例では、手術の信頼性向上によるメリットよりも導入費用の増大および現場作業の増加によるデメリットが多かった。病院経営にとって重要な課題である費用対効果に寄与しないため導入が進まなかった。

【目的】手術を効率化するには、総合的な手術マネジメントシステムの構築と早期導入が望まれる。本システムは、ICTを活用し品質保証体制の確立と手術前後作業のムダ、ムリを削減し効率化を進める。

【方法】手術用器具に微細な2次元コード刻印(UDI)を行い、開発した読み取り装置(DPMR)にて個体識別を行う。洗浄・滅菌装置、垂直回転棚および生物学的インジケータは、Wi-Fiを使用し、手術カートは、アクティブタグを使用しリアルタイム位置情報を利用した。

【結果】滅菌コンテナ・セットの組立時間は、システム導入前と比較して平均1/3以下に減少した。年間のセット組ミスは、導入前2013年15件が2017年は1件になった。労務費は年間約3000万円のコストダウンを達成した。

【考按】手術準備カートの位置情報をリアルタイムに収集することで適切な手術室への搬入確認や、急な手術室の変更にも対応が可能になった。導入後5年間で本システムに対する投資回収率は、ほぼ100%となりIoTとGS1を活用した総合滅菌管理システムは、医療の安全に成果を上げた。

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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