生体医工学
Online ISSN : 1881-4379
Print ISSN : 1347-443X
ISSN-L : 1347-443X
骨格筋の重力/無重力応答に関する研究
佐藤 文規瀬原 淳子
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 214

詳細
抄録

骨格筋の発達や維持に、筋収縮に対する負荷応答が大切であることは、多くの研究によって示されてきた。それに対し、重力に対する応答のメカニズムについてはほとんど解明されていないのが現状である。そもそも重力負荷応答というのは存在するのか?その分子実体は何か?そして重力負荷応答の欠如によると考えられている宇宙滞在による筋萎縮は、可塑的な廃用性筋萎縮や、現在はその進行を食い止めることが難しい加齢に伴う筋萎縮などとどのような共通性があり、また異なるのだろうか?

重力依存性についての研究には、宇宙実験が必要である。しかし、これまでの脊椎動物を用いた多くの宇宙実験は、地上帰還後にサンプリングした試料の解析を行ってきたことから、国際宇宙ステーション(ISS)滞在中に何が起こっているのか、どのような経過を辿って萎縮し、また回復するのか、実はよくわかっていなかった。そこで、重力・無重力応答の分子メカニズムの解明を目的として、我々はゼブラフィシュを用いた研究を行った。小型魚類の特性を生かして軌道上での泳ぎの評価を行いその重力依存性について検討するとともに、ISS 滞在中・地上帰還後における骨格筋の遺伝子発現の、時系列変化を検討した。本研究では、そこで得られた新たな知見について紹介したい。

著者関連情報
© 2020 社団法人日本生体医工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top