生体医工学
Online ISSN : 1881-4379
Print ISSN : 1347-443X
ISSN-L : 1347-443X
血液透析治療における化学発光を利用したリアルタイム尿素センシングへの挑戦
林 国人
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 241

詳細
抄録

私は1991年に臨床工学技士免許を取得し,兵庫県の病院に就職した.当時の主な業務は血液浄化であったが,阪神淡路大震災を契機に災害対策を含めた機器管理体制の構築が急務となった.現在は帰郷し,透析室の設立段階から関わった医院(19床の有床診療所)に勤務している.ここでは春季に数日間のプレ実習として学生(4年生)を受け入れ,命を繋ぐ現場を体感してもらっている.職場業務の他に,母校での人工呼吸器実習に参画(4ヶ月)させて頂いている.また,大学院へ進学し,2018年3月に修士課程を取得した.今回は,大学院での基礎研究から当院で行った臨床試験の内容と併せて,経験から学んだ日常業務と研究の進め方についても紹介できればと考えている.透析の治療効果をリアルタイムに評価できれば目標値の推測など様々な利点がある.そこで我々は尿素と次亜臭素酸を混合すると化学発光が生じることに着目し,透析液排液から尿素濃度を測定するセンサの作製を試みた.学内実験で試薬の次亜臭素酸ナトリウムと尿素窒素の最適な反応速度を導き出した.次に当院倫理委員会の承認を得た上で臨床試験を行った.結果,センサと従来法の測定値は相関係数0.96と良好であったが,センサを連続使用すると反応槽に炭酸塩が生じるなど不具合が発生じた.現在までに改良を重ね,治療条件下における要因が測定値にどのような影響を与えるか検討中であり,結果を含めて報告する.

著者関連情報
© 2020 社団法人日本生体医工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top