生体医工学
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維持血液透析における動脈チャンバー流入部のバックフローと溶血に関する実験的検討
工藤 元嗣菅原 望希宮崎 拓人矢萩 遥子千原 伸也巽 博臣升田 好樹
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 242

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抄録

【背景】血液透析において動脈チャンバー流入部にバックフロー(BF)が発生した場合,実血流量の低下が先行研究により示されている.一方,流量誤差を与えるほどの陰圧が発生していれば,溶血の危険性が推測されるがBFと溶血の関連については検討されていない.

【目的】本研究では,BFの大きさと溶血の関連性について検討するため人体を模擬した患者回路を開発してウシ血液による循環実験を行った.

【方法】動脈側回路の圧閉度を調整し, BFが0,1,2,4cmとなるよう脱血不良状態を作製して血流量200mL/分にてウシ血液を循環した.0, 12, 24分経過時点での赤血球数を比較してBFと溶血との関連についてFriedman検定およびTurkey検定を用いて検討した.

【結果】BF 0 cmでは赤血球数に経時変化はなかった.BF 1cmで0分,12分,24分での赤血球数がそれぞれ710万個/μL,596万個/μL,617万個/μLで,0分に対し,12分で有意に減少した. BF 2cm以上でも同様の傾向を示した.一方,12分と24分で赤血球数が変化しなかった.

【結語】動脈チャンバー流入部に目視で確認可能なBFを生じている場合,溶血を起こす可能性があり,何らかの適切な対処を考慮する必要がある.

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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