生体医工学
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映像脈波の形状と伝播速度の変化を利用した末梢血行動態の評価
熊谷 岬田中 明吉澤 誠
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 307

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抄録

近年,撮影した皮膚映像の色変化から脈波(映像脈波;VPG)を非接触で抽出し,心拍数などの生理指標を得る技術が注目されている.また,同時に計測された複数点の脈波間の伝播時間(PTT)の差と血圧との間に相関があることも報告されており,血圧推定への応用も期待されている.しかしながら,PTTは血圧だけでなく血管のコンプライアンスによっても変化するため,血圧推定のためにはキャリブレーションを定期的に行う必要があることが知られている.一方で,我々の研究グループでは周期成分分析(PiCA)を繰り返し行うことで従来法と比べより精度の良い脈波抽出法を提案し,VPGの脈波形状に対して指尖容積脈波と同様の解析が行える可能性を示した.そこで本研究では手腕部を対象とし,血圧および末梢血管のコンプライアンスの変化がPTTと脈波形状に与える影響について検討した.手の昇降や温熱刺激などによって末梢部位の血圧や血管抵抗を変化させた際の映像から提案手法を用いてVPGを抽出し,PTTや脈波形状の特徴量の変化について比較した.その結果,末梢の血行動態の変化に応じて,脈波伝播速度だけでなく,加速度脈波解析におけるパラメータなどの形状から得られる指標も特徴的な変化を示した.これらのことから,血圧の変化と血管コンプライアンスの変化によって脈波伝播特性がそれぞれ異なる変化をすることが明らかになった.

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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