生体医工学
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安静時μ波強度に着目した運動想起脳活動の検出方法の検討
中禮 周小野 弓絵
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 317

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抄録

事象関連脱同期(event related desynchronization:ERD)とは、運動想起または実行に伴う一次運動野のμ波帯域パワー値の減衰である。ERD強度は脳卒中患者の運動機能回復との関連性が報告されているため、脳卒中患者に対するニューロリハビリテーションでは、患側運動野からのERD強度を増加させる訓練が行われる。しかしERD強度は運動想起・実行前の安静時のμ波パワー値に依存するため、ばらつきが大きいことが問題であった。よって我々は、ERD強度を安定して検出するため、安静時のμ波帯域パワー値が一定時間、閾値を満たした場合に運動想起・実行を行う方法を検討している。本研究では、最適な安静時閾値とその持続時間を検討した。健常成人6名(平均年齢23.5±2.0歳、男女各3名)が実験に参加した。利き手の運動野付近の電極から計測した安静状態の脳波のμ波帯域パワー値(6-12 Hz)の平均強度を求め、安静時閾値を安静時平均強度の70~100%、持続時間を1~3秒とし、2分間に3回以上条件を満たすことのできた閾値と持続時間を調べた。被験者6名中5名において、安静時平均強度の80 %以上を1秒間保持することが可能であった。今後は個人ごとに設定した閾値と持続時間を満たす条件で計測したERD強度と、安静時閾値を用いない場合のERD強度を比較し、提案手法の優位性について検討する予定である。

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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