2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 316
本研究は脳卒中片麻痺患者の運動野の脳活動の半球間結合性の変化と機能回復との関連を検討することを目的とした。脳卒中片麻痺患者8名に対し、4週間のリハビリテーションの前後で掌握運動実行時の脳波を計測した。脳皮質部位間の機能的結合性を評価するためにPhase Locking Value(PLV)を算出し、機能回復の指標としてFugl-Meyer Assessment(FMA)の手指機能に関する評価項目を用いた。運動野における損傷側と非損傷側の結合性に着目し、掌握運動実行前3秒から2秒前の1秒間の平均PLVに対する運動実行時のPLVの増加割合の変化とFMA手指項目の変化量 との関連を検討したところ、β波帯域においてPLVの増加割合の減少とFMA変化量のとの間に負の相関が見られた。このことから、リハビリテーション後にFMAで回復がみられる患者では運動実行時の運動野におけるPLVの増加割合が減少する、つまり半球間結合性が小さくなることが示された。半球間結合性の減少は運動実行時における非損傷側の運動野の関与の減少を示唆しており、リハビリテーションにおいて損傷側に残存する機能を活用できた患者ほど、運動機能の回復がもたらされたと考えられる。