生体医工学
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有機EL照明の色を変えたときの脳波に関する一検討
神林 美帆遠間 隆広田中 元志室賀 翔齋藤 勝俊新山 喜嗣
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 326

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抄録

快適な照明空間と脳波情報を用いたその評価方法の構築を目的に,有機ELを用いたカラー照明を試作し,色が異なる空間の居心地の良さについて主観評価と脳波測定から検討してきた。指標としてα波やβ波成分のパワーを求めたが,主観評価との対応が見られない場合があった。赤は興奮を促す,緑や黄茶は緊張を和らげる,などが知られている。本研究では,それらの色の空間で脳波測定を行い,主観評価との対応から検討を加える。実験室で,被験者の前方と両脇を高さ1.8 mの白板で囲い,正面の壁中央(距離約2.8 m)高さ1 mにカラー照明(有機ELパネル8×8枚)を配置した。照明の色を緑⇒赤⇒紫,黄茶色⇒水色⇒黄など(各90 s)と変えたときの脳波を標本化周波数1 kHzで取り込んだ。スペクトル解析を行い,色の切替え前後の各脳波成分(α波,β波,θ波など)のパワー比を求めた。探査電極をFz,Cz,Pz,Ozとした。被験者は健康な成人13名(21~23歳)であり,同意書を得て実験を行った。緑⇒赤のとき,fast α波成分が増加し,居心地の平均評価値(MOS)は低下,気分は向上していた。赤⇒紫のときはfast α波成分の減少に対して,居心地のMOSは増加,気分は低下し,対応が見られた(Cz)。色の変化によっては主観評価と対応が見られない場合があったが,脳波成分の変化が確認された。本結果から,快適性評価への脳波情報の利用の可能性が示唆される。

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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