生体医工学
Online ISSN : 1881-4379
Print ISSN : 1347-443X
ISSN-L : 1347-443X
血流動態を用いたfNIRS信号分離における分離パラメータ特性
野田 善尭吉田 久
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 327

詳細
抄録

近年,脳機能活動の非侵襲計測手法としてfNIRSが用いられることが増加している.fNIRSはfMRIに比べ,拘束性が低いため,活動的,あるいは道具を用いた課題を比較的行いやすいといった特徴があるが,実際のfNIRS計測信号には体動や生理学的変動の血流量変化が容易にアーチファクトとして混入する.混合信号の分離手法としてはバンドパスフィルタを用いたフィルタ処理や独立成分分析を用いた方法,血流動態分離モデルを用いた山田らの方法などがある.血流動態分離法は機能性成分と全身性成分の血流動態の違いに着目し,2つの成分を分離する手法である.本研究では,この血流動態分離法におけるパラメータ特性を調査した.血流動態分離法は機能性成分における酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの比率を表す係数を固定するが,我々は計測部位や計測区間(課題と非課題区間)ごとに異なる傾向があるか否かを確認するために,相互情報量を評価関数として動的に決定した.その結果,課題に関連した変動が確認された部位や区間とその他の部位や区間では決定された係数に差が見られた.従前の固定された係数は全身性成分を除去する実験的配慮が行われた研究を元に経験的に決定されているが,全身性成分の混入が予想される計測信号の分離における係数は計測部位や課題によって変動する可能性が示唆された.

著者関連情報
© 2020 社団法人日本生体医工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top