生体医工学
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関節軟骨局所変形解析のためのX線位相差ダイナミックCTの開発
河野 周作大澤 恭子星野 真人松本 健志
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 329

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抄録

高齢者人口の増加に伴い,筋骨格障害の一つである変形性関節症(OA)への対策が求められている. OAについては,関連する生活習慣やリスク因子の解明が進んでいるが,関節軟骨の力学的特性とOA発症との関連については明らかにされていない.OA発症は局所的な軟骨機能異常が起点となる可能性もあることから,OA発症メカニズムを力学的視点から理解するためには,軟骨内部の力学特性を評価する手法を確立する必要がある.そこで本研究では,コラーゲン線維の分布密度や配向構造を高感度に検出できるX線位相差ダイナミックCTを確立し,これを繰り返し変形を受ける関節軟骨組織の動的粘弾性試験に応用し,その有用性について検討した.X線光源にはSPring-8放射光を利用し,軟骨密度差に起因する位相差はTalbot干渉計を利用したモアレ法により検出した.ブタ後肢脛骨の近位荷重支持部の軟骨組織より採取した軟骨試料に対し,静的試験では無負荷時及び10%歪みを与えて平衡に達した後に,動的試験では,荷重負荷周波数0.4Hz,0.8Hz(最大歪み10%)を与えながらX線位相差CT撮像を行った (4.4μmボクセル).静的試験下においてはコラーゲン線維構造(密度,配向)を捉えることができたが,動的試験下においては解像が不十分であり,撮像アルゴリズムの改善を要すると考えられた.

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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