2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 343
日本において創薬コストの削減は大きな課題である。創薬コストの削減を達成するために近年注目されている手法は、ヒトiPS細胞由来心筋細胞を利用した、前臨床試験である。現状の前臨床試験は、主に動物実験により行われているが、ヒトと動物では、種間特性・薬物動態が異なることから、必ずしもヒトと同じ薬効を示さないことがあった。この課題を解決するために、ヒトに近い反応を示すヒトiPS細胞由来心筋細胞により構築したin vitroの細胞組織を利用した薬効評価システム確立に関する研究が注目を集めている。本研究では、作製したヒトiPS細胞由来の細胞外電位などの情報を低侵襲なモニタリングが可能な、厚さ500 nmの超薄膜センサの開発を行った。開発したセンサは、生体適合性を有するパリレンフィルムをベースとしており、細胞外電位を計測するための厚さ100 nmの金電極がパターニングされている。非常に薄いため、測定対象物表面の複雑な形状に沿うように対しても密着し、動きに追従しながら細胞外電位のモニタリングが可能である。作製した超薄膜センサを利用し、ヒトiPS細胞由来心筋細胞の拍動に追従しながら、細胞外電位を多チャンネルで測定することに成功した。また、アドレナリン等の薬剤に応答する様子を細胞外電位波形から確認することに成功したため、作製したセンサはヒトiPS細胞由来心筋細胞の薬剤応答を評価するためのセンサとして、有効であると考えられる。