生体医工学
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脱髄疾患モデル構築に向けた感覚神経細胞からの活動伝播記録
榛葉 健太小谷 潔神保 泰彦
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 355

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抄録

糖尿病などの疾患では,神経細胞の軸索を覆う構造であるミエリン鞘の変性(脱髄)により痛覚過敏が誘発される.脱髄の発生機序は明らかになっておらず,詳細な評価には培養細胞による疾患モデルが有効と考えられる.脱髄性疾患モデルの構築には,ミエリン鞘の形成,および形成過程の経時的評価が重要である.本研究では,脱髄性疾患モデルにおける脱髄過程の長期計測手法の開発を目指し,有髄軸索において起こる跳躍伝導の計測手法の開発を目的とする.ラット新生児より採取した後根神経節の神経細胞およびシュワン細胞を共培養したところ,ミエリン鞘に特異的に発現するmyelin basic proteinが発現し,ミエリン鞘の形成が示された.2万6千点の電極を集積化した計測デバイス上で同様に共培養を行い,4-aminopylidineおよびカプサイシンを用いて刺激したところ,活動が10 mm以上にわたって伝導する様子が計測された.伝導速度は1 m/s以下の部分が多く,無髄軸索上の伝導である可能性が高いものの,本デバイスが計測に十分な空間・時間分解能を有することが示唆された.今後は,ミエリン鞘を効率よく形成させるために培養条件を検討したうえで,跳躍伝導の検出を目指す.

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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