生体医工学
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周期的機械刺激が微小な球状筋組織内の力学的環境と組織成熟に与える影響の解明
太田 貴之馬淵 将来須見 隆弘宮田 昌悟
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 356

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抄録

 骨格筋組織の再生医療ではその他の生体組織と同様に三次元組織の構築手法として,細胞をハイドロゲルや多孔質体などの培養担体に包含して培養する手法,細胞シート,スフェロイドの形態で培養する手法が有効である.これら再生組織を移植する際には,移植先の組織への生着性を高める観点から微小な筋組織体が有利である.我々の研究グループではこれまでに筋芽細胞株を含む微少な細胞含有コラーゲンゲルビーズを用いた微小筋組織の再生に取り組んでいるが,静置培養系では筋組織が有する細胞・組織の配向や収縮特性において十分でないことが課題であった.そこで本研究では,球形の筋組織体に力学的刺激を付与可能な培養デバイスを構築して,筋芽細胞株を包含する微小コラーゲンゲルビーズを培養することで筋組織としての成熟化を促進することを目的とした.具体的には,骨格筋由来の筋芽細胞株(C2C12)を包埋したコラーゲンゲルビーズを構築し,ビーズよりも小さな孔を介して周期的に培地を流動させることによって力学的な刺激を印加しながら培養可能なデバイスを構築した.さらに,数値解析により吸引刺激によって生じるビーズ内部の培養液の流動やビーズの変形を分析することで細胞が曝されている力学的環境を明らかにした.力学的刺激を印加しながら培養した試料では,筋分化の指標である細胞の配向および細胞骨格が成熟しており,力学的刺激による筋分化の促進が認められた.

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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