2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 358
再生医療分野で注目されている培養心筋組織の拍動収縮能は、in vivoでのそれと比較して著しく低いことが知られている。我々はこれまでに、ラット培養心筋細胞内の多価不飽和脂肪酸特にドコサヘキサエン酸(DHA)及びアラキドン酸(AA)含有量が新生仔心筋に対して低値であること、さらには、20 μM DHA及び50 μM AAをそれぞれ培地へ単独添加することで、これら脂肪酸の培養心筋細胞内含有量は新生仔心筋での含有量に近づき、かつその時の拍動収縮率も最大となることを報告した。その一方で、これらの濃度でのDHA及びAAの同時添加では、拍動収縮率が無添加細胞よりもむしろ低値となることも報告した。そこで本研究では、5-20 μM DHA及び5-50 μM AA同時添加(n=4-10)がラット培養心筋細胞の拍動収縮能に及ぼす影響について検討した。その結果、脂肪酸添加培地にて4日間培養した培養心筋細胞の拍動収縮率は10 μM DHA +10 μM AA添加時に脂肪酸無添加群と比較して有意に高値(P<0.05)となった一方で、拍動数には影響を与えなかった。また、これらのパラメータの積としての単位時間あたりの積算収縮率では、DHAの添加濃度によらず、40 μM AA添加群が脂肪酸無添加群に対して有意に低値(P<0.05)であった。これらの結果は、少なくとも10 μM DHA + 10 μM AAが培養心筋細胞の拍動収縮率を向上させる可能性を示唆している。