生体医工学
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ラット培養心筋細胞の拍動能に及ぼす多価不飽和脂肪酸の効果
矢野 瑞菜梅原 悠太佐藤 大介楠 正隆馮 忠剛
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 357

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抄録

再生医療への応用が注目されている培養心筋組織の発生応力は、生体内のそれに比べて著しく低い。ラット培養心筋細胞の多価不飽和脂肪酸(PUFA)含有量が新生仔心筋組織に対して著しく低値であることから、これまでに我々は、培地にリノレン酸またはリノール酸を添加し、伸長反応による培養心筋細胞への各種PUFAの供給を期待したが、より長鎖のドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)及びアラキドン酸(AA)の含有量は新生仔心筋に対して依然低かったことを報告した。本研究では、1-10 μM DPA、10-40 μM DHAまたは20-60 μM AA(n=5-8)培地添加がラット胎児由来心筋細胞の脂肪酸含有量と拍動能に及ぼす影響を評価した。11日間の培養の結果、添加したPUFAの細胞内含有量は添加濃度依存的であり、1-3 μM DPA、10-20 μM DHAまたは30-50 μM AA添加時に、新生仔群(n=11)の値に最も近づいた。培養5日目の拍動収縮率をPUFA無添加群(n=11)と比較したところ、DPA添加群はPUFA無添加群に対して有意差はみられなかったが、10-30 μM DHAと20及び40-60 μM AA添加群はPUFA無添加群に対してそれぞれ有意に高値(P<0.05)となり、それぞれ20及び50 μM添加時に最大となった。拍動数では、30 μM DHA添加時にのみPUFA無添加群に対して有意に高値(P<0.05)であった。これらの結果は、少なくともDHA及びAAの添加が、培養心筋細胞の拍動能を向上させる可能性を示唆している。

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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