2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 370
心嚢穿刺術は心タンポナーデを生じた心臓に対して体外より心嚢空間に穿刺し,心嚢液を採取排液して心臓への圧迫を解除する手技である.しかし,穿刺時に心膜と心臓は目視できず,加えて心臓は拍動を残しているため,心筋まで過剰穿刺せずに針の挿入を適格に制御して穿刺する必要のある非常に難易度の高い手技である.我々は既報にて心嚢穿刺トレーニング用の拍動流型心臓模擬装置の開発を行ったが,心拍動のため穿刺タイミングが正確に分からない,また穿刺毎に模擬心臓装置をすべて交換する必要がある構造のため,繰り返しのトレーニングに向かないという課題があった.そこで本研究では模擬心膜貫通タイミングと穿刺力を正確に計測可能かつ繰り返し使用可能な心嚢穿刺トレーニングシステムの開発を目的とする. 拍動中の心臓模擬装置の模擬心膜部分に対して心嚢穿刺を行い、穿刺力を測定した.測定した穿刺力から,拍動流ポンプの動作周波数帯域を心臓拍動の周波数成分として減衰させることで穿刺力のみを抽出し,模擬心膜の貫通タイミングと貫通時穿刺力を導出した.また心臓模擬装置の構造を改良し,穿刺による心嚢液の漏出と,心拍動抑制を部品とすることで繰り返し穿刺を可能とした.循環器内科専門医1名によるシステム使用を行いトレーニング装置としての定量的評価を行ったので報告する.