2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 388
生体信号時系列に見られる不規則変動は、多くの場合、長時間相関と呼ばれる特性を示す。長時間相関特性は、加齢や疾患の有無により変化することから、その重要性が示されてきた。時系列の自己相関関数とパワースペクトルはWiener-Khinchinの定理で対応づけられることから、長時間相関特性はパワースペクトルを用いて評価することができる。長時間相関時系列では、推定されたパワースペクトルは,周波数をfとして、S(f)~f^(-β)の形をとる。このべき指数βはスケーリング指数と呼ばれ、βの値により長時間相関特性が評価される。β=0の場合が、無相関な白色ノイズに対応するため、定常時系列においては、指数が0以外の場合に長時間相関がある。また、生体信号時系列には、異なるスケーリング指数をもつ2つの領域が交差するクロスオーバー現象が見られることがある。本研究では、そのようなクロスオーバー現象を含む長時間相関過程を再現する一般的な数理モデルを提案する。従来、長時間相関のモデルとしては、自己回帰非整数積分移動平均 (ARFIMA)モデルが広く用いられてきた。ここでは、ARFIMA(1, d, 0)モデルに非整数演算を導入することで、クロスオーバー現象を再現する数理モデルを新たに提案する。講演では、このモデルの数理的特性を明らかにし、生体信号時系列解析への応用について議論する。