2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 413
脳卒中により片麻痺となると,自立歩行能力が低下し,転倒へとつながることがある.片麻痺患者のほとんどが自宅環境での転倒を経験することに加え,重篤な骨折を引き起こす可能性も高いことから,予防措置としての転倒リスク評価が重要になる.現在,片麻痺患者の転倒リスクの評価指標として,ステップ時間の左右非対称性(ASY_step)や,ステップ時間の標準偏差(SD_step),腰部加速度の変動係数(RMS_CV)などが報告されている.しかし,各指標の標準偏差が大きく,健常範囲との区別が難しいことや,歩容が患者間で多様であることから,単一指標でのリスク評価は困難であると考えらえる.そこで本研究では,上記のASY_step,SD_step,RMS_CVの関連性を検討した.慣性センサを用いて片麻痺患者10名,健常者10名を対象に歩行計測を行い,これらの値を比較した結果,RMS_CVに関しては,健常者と片麻痺患者との差異は見られなかった.また,片麻痺患者において,ASY_stepが,先行研究における転倒患者の範囲内であるにもかかわらず,SD_stepの値が非転倒患者の範囲内である被験者がみられた.転倒リスクの評価において,単一指標での評価が困難であることが再確認された.各指標の値に反映される転倒の要因が様々であると考えられるため,複数指標を用いた評価の必要性がある.