2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 120
高齢者は、慢性疾病の管理だけではなく、フレイルや認知機能低下などの併存疾患の存在、また生活環境では老老介護や独居など、多くの問題を抱えながら、住み慣れた地域で過ごし続けたいと願っている。わたしたち医療者は、地域での人的資源のあるなかで、高齢者に対して多様性・専門性・効率性を考えながら、いかに適切な医療が提供できるかに頭を悩ませている。ICTの進歩により多くの生体情報モニタリングシステムが開発され、この問題を解決できれば何よりである。ここで、安心して高齢者が過ごしていくにはどのようなICTが必要かを考えたい。
生活を便利にするために、すでに多くのメーカーの電子機器のリモコンがテーブルに並んでおり、高齢者はその区別をすることも容易ではない。それに加えて、外部からの生体モニタリングが設置されるとしよう。リビングに設置した見守り機能でモニタリングできれば良いのか、心臓が悪い人には心電図波形を遠隔でモニタリングができれば良いのか、トイレでバイタルデータを経時的に拾えれば良いのか、いずれも答えはYESでもあり、NOでもある。高齢者は多様性に富んでおり、ひとつをモニタリングすればすべてが解決するわけではない。
次に、医療者側を考えてみよう。当法人では1,000例以上の在宅医療の患者をテレナーシングシステムとして看護師が電話対応から生体モニタリングを行っている。そのデスクトップには、様々なメーカーのアプリが多く並んでいる。それぞれのICT機器は、その目的や仕様方法が違い、患者のユースケースにより使用するものが変わってくる。それを看護師が個別性に合わせ、ある意味アナログでアプリを開き、複数の指標からトリアージしていく。これがいまの医療側の実際である。
高齢者医療におけるICTの問題点はいくつかある。臨床的意義があるのか、コストは誰が払うのか、そのリテラシーをどのように解決したらよいか。本セッションでは、超高齢社会にあるいまの現状を実臨床からお伝えし、「これから必要とされるモノは何か」、次世代の高齢者が安心して地域で過ごしつづけるために、皆さんに創造してもらえるようなセッションになればと思う。