生体医工学
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日常的空間における言語・非言語コミュニケーション中の脳機能ネットワーク
小野 弓絵
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2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 165

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抄録

ヒト対ヒトの社会的なコミュニケーションは,情報の送信者と受信者が交互に役割を交代しながら,伝達される言語的情報と表情や声のトーンなどの非言語的情報とが周囲の環境の文脈に沿って一定の目的のために処理される,極めて高次な脳機能の発現である。本発表では,脳波・fNIRSを用いたハイパースキャニング技術を用いて,日常的空間に近い実験環境において行われた言語・非言語コミュニケーション中の脳活動ネットワークの研究成果について報告する。非言語コミュニケーションの実験では,対面する実在のパートナーまたは写真のパートナーとのアイコンタクトを行い,実在するパートナーとのアイコンタクト時に特異的な前頭前野背外側部をハブとする脳活動ネットワークを検出した。言語コミュニケーションの実験では双方向性の有無を変化させた会話課題を行い,双方向性が求められる対話時にのみ,会話の受信者の運動性・感覚性言語野間に双方向性の因果的結合が発生することを明らかにした。コミュニケーションの成立に関わる脳活動ネットワークの解明により,コミュニケーションの質の可視化や,自閉症者のコミュニケーション訓練システムの開発など,様々な医工学的応用が期待できる。

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© 2021 社団法人日本生体医工学会
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