2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 230
多数の細胞からなる組織の形作りは、生命における自己組織化現象の一つである。これまで、組織形成に関わる多くの分子が明らかにされてきた一方で、個々の分子の動態がどのように統合されて適切な組織の構造を形成するのかについては未知であった。組織形成には、細胞が生じるアクティブな力が重要な役割を果たしている。特に、複雑な器官の形態形成では、個々の細胞が組織全体の変形を感知し、空間スケールを超えて器官全体の構造を調節すると考えられる。このようなマルチスケールな現象を理解するため、我々は3次バーテックスモデルを用いた新しい計算力学手法を開発し、幹細胞オルガノイドの培養実験と組み合わせた多角的な解析を行ってきた。このアプローチにより、1細胞レベルにおいて多細胞の動態を定量的に予測し理解することが可能となった。本講演では、幹細胞から誘導した眼杯オルガノイドの形態形成おける力学フィードバック機構について議論したい。