2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 259
上肢機能のリハビリテーションにおいて、従来の評価指標は評価の粒度が大きく、評価の得点から患者の正確な症状を把握することは困難である。従来より画像処理に基づく手法は提案されているが、上肢機能のリハビリテーションに特化した定量評価手法の確立には至っていない。そこで本研究は、患者の上肢運動を撮影した映像に対して骨格推定に基づく動作解析を行い、上肢機能評価のための定量的指標の導入を目的とする。提案手法ではまず、対象動作のRGBカメラ映像に姿勢推定を用いて骨格情報を抽出する。次に関節の回転系を用いて体幹の傾きなどを測定し、代償動作を数値化する評価モデルを作成する。実験では、脳卒中の後遺症を持つ患者の上肢機能に対する評価方法であるARAT(Action Research Arm Test)のうち、サブテストの一種である「Grasp動作 (物を掴んで持ち上げ、台に乗せる動作) 」を対象とした。代償動作の度合いが異なる動作を療法士に行ってもらい、従来の評価では等しい得点である動作をより細やかに評価することを試みた。その結果、代償動作が存在する動きと、そうでない動きを分類することができた。また、従来のARATでは同じ評価の動作に対し、代償動作である体幹の傾きの度合いを定量的に評価することができた。