生体医工学
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生体医工学と医学物理学の融合が拓く放射線治療の新展開
中村 光宏
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2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 266

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抄録

放射線治療とは,がん細胞と正常細胞の放射線感受性の差を利用して,病変に放射線を照射する治療法である.近年,病変に対して放射線量集中性を高めると同時に,周辺臓器への放射線量低減を可能とする高精度放射線治療が臨床現場で普及している.高精度照射技術を用いる場合,治療計画や品質保証に要する期間を考慮して治療数日前にCT画像を撮影し,治療計画を作成する.ここで治療計画とは,専用のソフトウェアを用いてCT画像から病変と周辺臓器を同定し,それらの空間的位置関係を勘案して,病変に対する照射方向・放射線出力・照射野形状を決定する工程のことを指し,CT値に応じて体内線量分布が計算される.放射線治療装置の高精度化に伴い,計画通りに放射線を照射することが可能になったが,呼吸や腸管蠕動などの影響により体内臓器の状態は時々刻々と変化するため,体内で吸収される放射線量は計画通りにはならない.現在,本学情報学研究科と共同で,放射線治療の各工程に潜む問題点を抽出し,従来の放射線治療の在り方を変えるような取り組みを行っている.本講演では,その成果の一部を紹介する.

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© 2021 社団法人日本生体医工学会
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