2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 268
軟骨は自己治癒が困難な組織であり近年,自家培養軟骨の移植による変形性膝関節症(OA)の再生治療が急激に発展してきているが,移植予後における診断法の確立がなされていない現状にある.移植後の組織定着においては,炎症反応等による初期OAと類似した状態とも考えられ,その診断法の確立は重要である.本研究では,ドップラーOCT(OCDV)による組織内透水性評価に基づいた初期OA診断法を提案し,臨床用に実装化するための関節内視鏡診断システム(A-OCDV)を開発し,その妥当性について検討を行う.圧縮試験機を用いて採取したブタ軟骨をサンプルとして,関節内視鏡を用いて応力緩和試験を行い,軟骨内部組織の同一位置における低コヒーレンス干渉信号を連続断層検出した.更に,ドップラー変調周波数を断層検出し,組織変位と軟骨水流動速度の断層可視化を行った.比較対象としてコラゲナーゼ酵素処理を2時間施した模擬変性軟骨を適用した.この結果,模擬変性軟骨では正常軟骨と比較して圧縮中の組織変位およびドップラー速度が大きく,軟骨組織の弾性破綻が検出された.緩和中の正常軟骨では,ドップラー速度がほとんど検出されないのに対し,模擬変性軟骨では長時間に渡って検出されることから,軟骨水の組織内流動が活発であることが検出されたこれにより,透水性評価に基づいたA-OCDVを用いた診断が可能であると示唆された