2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 274
生体システムでは,長時間相関やフラクタル性と呼ばれる特性をもつゆらぎが多く観測されてきた.最近我々は,2次元軌道のゆらぎについて,非等方的なフラクタル特性を示すモデルを提案した.このモデルでは,異なる2方向のそれぞれで異なるフラクタル性をもつ変動の合成として,2次元軌道が記述される.さらに,指向性フラクタルスケーリング成分分析(oriented fractal scaling component analysis:OFSCA)と呼ばれる解析法を導入し,2次元軌道データから元の独立な2成分を抽出できることを示した.OFSCAでは,2次元軌道を特定の方向に射影し,その方向と推定されたスケーリング指数の関係から,元のフラクタル成分がなす角度を推定する.この方法は,独立成分分析では分解できない,正規分布に従う変動にも適用可能である.本研究では,OFSCAを用い,静止立位姿勢時の足圧中心動揺を解析した.ここでは,健常人男性3人を対象とし,開眼状態で足圧中心動揺を計測した.足圧中心動揺の解析結果から,異なるスケーリング特性をもつ非直交成分の存在が確認できた.さらに,このような非直交性が利き足を中心とした姿勢制御と関連することが示唆された.