生体医工学
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生物電池の開発に向けた液滴ネットワークの電気特性に関する研究
本郷 光太郎彭 祖癸榛葉 健太宮本 義孝八木 透
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2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 433

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抄録

生体内に電子デバイスを組み込むためには,生体適合性,機械的柔軟性があり,生体内で利用可能な化学エネルギーで発電できる電池が求められる.デンキウナギの発電器官は,ピーク電位が600V,電流が1アンペアの電気特性を持ちながら,これらの生物学的制約をみたすことのできる電源である.デンキウナギの発電細胞は細胞外のナトリウムイオンをナトリウムポンプを通して選択的に細胞内に流入させることで発電を行う.このような細胞膜内外のイオン濃度差を利用する方法は液滴界面二重層(DIB)に応用できることが知られている.リン脂質中で2つの濃度の異なるNaCl液滴を結合,その間に形成された脂質二重膜に陰イオン選択性の膜タンパク質を挿入させることで電流を生成する.しかし陰イオン選択性の膜タンパク質は合成が難しく,この電流を制御する方法は開発されていない.そこで膜タンパク質と同様にイオン選択性をもつだけでなく,合成が容易かつ化学的に安定なカーボンナノチューブ(CNTs)を利用して,DIBを介したイオン電流の制御を試みる.本研究ではその前段階として脂質二重膜の膜面積とキャパシタンスの相関を調べた.その結果,膜面積とキャパシタンスの間には強い相関があり,実験系の有用性が示された.また, CNTsのコンダクタンス計測を行ったところ,コンダクタンスについて二峰性のヒストグラムが得られた.これにより脂質二重膜にCNTsが挿入されたことが示唆された.

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© 2021 社団法人日本生体医工学会
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