2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 611-613
強く噛み締めたり擦り合わせて歯に非常に強い力を加えるブラキシズムは、歯が欠けたり顎関節症を引き起こす恐れがある。また、開閉口筋の同時緊張により、上下の歯が接触せず筋肉に負荷を及ぼす擬似クレンチングと呼ばれる状態も存在する。これらは生体への為害作用が異なるため、簡便で正確な自動検出が望まれている。そこで本研究ではこれらについて、開閉口筋の筋電信号と口腔内の生体音を特徴量として機械学習を用いた自動検出を試みた。被験者は健常な成人男女12名であり、咬筋部、顎下部、オトガイ部、輪状軟骨部の筋電信号及び右側の下顎角部における生体音を計測した。これらの信号のメル周波数ケプストラム係数を特徴量とし、ブラキシズム、擬似クレンチング、その他の3クラスの隠れマルコフモデルを作成した。単一の特徴量を扱うモデルと複数同時に扱うモデルの両方を作成し、モデルごとに交差検証によりブラキシズムと擬似クレンチングの検出に対するF値を算出した。ブラキシズムのF値について、筋電を個別に用いたモデルでは咬筋部で高く77.2±8.1%であった。音響信号を個別に用いたモデルでは60.1±16.0%であった。また、複数の特徴量を同時に扱ったモデルのうち最も高かったものは81.7±8.5%であった。この結果から被験者間のばらつきは大きいものの、ブラキシズムや擬似クレンチングについて適切に特徴量を組み合わせることで自動検出が凡そ可能であることが示唆された。