2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 723-725
音楽経験者と非音楽経験者を対象に,メロディーの輪郭 (連続する音列の音高の変化パターン)の変化に対するミスマッチ陰性電位 (MMN) を計測した。5つの連続するトーンバーストから構成される音列を刺激音とし,各構成音の音高を変化させて山形/谷形/上昇形/下降形の輪郭を持つ4つの刺激音を作成した.これらの刺激音を標準刺激とし,各標準刺激の第3音を変化させることでそれぞれに 5種類の逸脱刺激を作成した.標準刺激と5つの逸脱刺激の組み合わせを変えて4回のMMN計測を行い,各々の逸脱刺激に対して誘発されるMMNを観察した.その結果,非音楽経験者においては第3音の音高変化が大きいほどMMNが増大したが,音楽経験者では刺激音列のメロディーの輪郭変化に対してより大きなMMNが出現した.また,非音楽経験者においては山形,音楽経験者においては山形/谷形で逸脱刺激に応じてMMN活動強度が大きく変化したが,上昇形/下降形では刺激音に応じた変化が小さかった.さらに,音楽経験者では非音楽経験者に比べてMMN潜時の短縮が認められた.音楽経験により音列を群化して捉える能力が高まりメロディー輪郭の弁別能が向上したこと,およびメロディー処理に係る速度が亢進したことを示している.