2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 737-739
【背景・目的】近年、アルカリ金属原子のスピン偏極を利用して磁場を計測する光ポンピング磁気センサ(Optically pumped magnetometer : OPM)が注目されている。OPMを用いて高感度な生体磁気計測の実現には、環境磁気ノイズを低減することが必要である。その方法としてグラジオメータ構成による差動計測が考えられる。本研究ではバイアス磁場の空間的不均一性を仮定し、グラジオメータ構成の各センサセル間でのOPM出力の共鳴周波数のずれを補正する手法についてシミュレーションによる検討を行った。【方法】K-Rbハイブリッド型センサセルを使用した。共鳴周波数のずれによる影響を補正するため、OPMの出力の周波数特性を伝達関数を用いて補正した後に差分を取った。用いた伝達関数は二種類あり、一つは数値シミュレーションによるサンプリングにより得られた離散的なもの、他は、従来のOPMの周波数特性によるフィッティングにより得られた連続的なものである。【結果・検討】いずれの伝達関数を用いた場合も補正を行うことによりノイズフロアが低下した。また、サンプリングにより得られた伝達関数を用いた場合のノイズフロアの値の方が、OPMの周波数特性によるフィッティングにより得られた伝達関数を用いた場合のノイズフロアの値よりも小さくなった。今後、実験により以上の結果を検証して行く予定である。