生体医工学
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破壊兆候を検知する脳外科手術用レトラクタの開発
望月 遼一田中 慎吾笹川 泰生中田 光俊渡辺 哲陽
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2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 743-745

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抄録

"脳神経外科手術において医療機器を使用する際その繊細な組織を扱う性質上,術者がその操作加減を誤れば重大な医療事故を引き起こす危険性が伴う.手術中の脳組織の損傷は防ぐべき課題であり,その内の原因にレトラクタによる過負荷が挙げられる.レトラクタとは手術中の視野の障害となる組織を圧排させ手術領域を広げる医療器具である.本研究では術者の負担を減らし,過負荷による医療事故を防ぐため,組織の破壊兆候を検知し自動圧排するレトラクタの開発を行った.破壊の兆候検知について,破壊力学によれば組織損傷に伴う破壊は力ではなく、圧力または応力に関係しているとされる。そこで破壊兆候を検知するために,非圧縮性流体を封入することによって圧排中の接触圧力をリアルタイムで計測できるようなレトラクタを開発し,柔らかい材料の圧排中の圧力を計測した.その圧力挙動は,はじめに下に凸の非線形を描きながら上昇しそして線形性を保ち,亀裂発生後材料構造が壊れることでまた非線形となることが分かった.そこで,亀裂発生手前また十分な力が伝達することができていると考えられる線形性となるところを破壊の兆候となるカ所とし,そこを検知し器具を停止させる自動圧排システムを開発した.絹漉豆腐と市販の羊の脳を対象にして圧排検証実験を行い,その有効性を確認した.実験では対象物が破損する前にレトラクタ器具を自動で停止させることができることを確認した."

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© 2021 社団法人日本生体医工学会
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