生体医工学
Online ISSN : 1881-4379
Print ISSN : 1347-443X
ISSN-L : 1347-443X
経頭蓋細胞外インピーダンス制御(tEIC)による脳機能への介入
眞溪 歩
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 112_1

詳細
抄録

神経細胞の発火を決定する膜電位は,樹状突起電流が細胞膜を貫通するときに生じる電位差である.細胞外での樹状突起電流の空間和は体積電流と呼ばれ,脳波はこの頭表での電圧降下である.体積電流は,発生源の神経細胞において細胞膜を貫通したのであるから,その伝播の過程で他の神経細胞の細胞膜も貫通できるはずであり,その神経細胞の膜電位にも加法的影響を与え得る.このようなシナプス結合を介さない直接の電気的結合は,近接する一対一の神経細胞間の場合(~10μm),ephaptic coupling(EC)と呼ばれ,発火タイミングに影響を与えることが知られている.一方,脳波の律動成分は数100万個の神経細胞の時間空間的な同期発火から生じる.ここで距離の2乗の減衰則を考えると,ECは~10mmオーダに延伸し,脳では領野間距離となる.ephapticはtouchの意味なので,距離によらない神経細胞間の直接の電気的結合を体積電流結合と呼ぶことにする.体積電流結合が何らかの脳機能を担うのであれば,頭部内での体積電流分布に変調を加えれば,脳機能に変化が現れるはずである.経頭蓋細胞外インピーダンス制御(tEIC)は,頭表に負性インピーダンスを取り付けることにより,体積電流分布を制御する手法である(Matani+, PLoS ONE, 2014).tEIC適用下で行なった認知行動実験に生じる行動・生理的影響について発表する.

著者関連情報
© 2022 社団法人日本生体医工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top