生体医工学
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古くて新しい次世代放射線治療 ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)
田中 浩基
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2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 113_1

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抄録

 ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy)は中性子とホウ素の同位体B-10との核反応によって生成する荷電粒子を用いてがん細胞を死滅させる放射線治療である。荷電粒子の細胞内での飛程が10マイクロメートルと短いため、がん細胞に選択的に集積するホウ素薬剤を用いることで、原理的には隣の正常細胞にはダメージを与えないという特徴を持つ。この原理は中性子が発見された1932年の4年後にLocherによって提唱された。 BNCTを行うには強力な中性子源が必要であり、1951年に米国の研究用原子炉で初めてBNCTが実施された。その後、世界中の研究用原子炉において約1000例を超える臨床研究が実施されたが、老朽化により運転を停止する研究用原子炉が多く、BNCTの臨床研究を継続するのが困難となった。BNCTの普及発展のためには、医療機関に併設可能な加速器を用いた中性子源が必要であり、2000年代から日本を中心に研究開発が活発化してきた。 2012年には世界で初めて加速器中性子源によるBNCTの臨床試験が日本において行われ、2020年にはBNCT治療システムとして医療機器として承認が得られるに至った。また、同年には切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌に対する保険適応によるBNCT が医療機関において開始された。近年では様々な中性子発生方式による治療システムの開発が進んでおり、本発表においてはこれまでのBNCTの歴史を含めて、最新の知見について紹介したい。

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© 2022 社団法人日本生体医工学会
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