2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 117_2
人工知能(AI)の医療への応用範囲は、疾患診断、予後予測、発症リスク評価、治療法選択と幅広い。その中でも、画像診断への応用が多く、アルゴリズムは視神経システムを模倣したConvolutional Neural Networkが主流である。整形外科は単純X線画像やCT/MRI画像など画像診断が多く、その活用範囲は広い。骨折診断、脊椎・脊髄病変検出、膝靭帯損傷診断、骨・軟骨・筋肉の画像抽出、予後予測、関節症診断、骨年齢評価、歩行解析、穿刺部位検出、骨粗鬆症診断や骨折リスク評価、バイオメカニクス研究などでその応用が試みられている。関節外科領域では2019年以降報告が増えている。単純X線画像では、大腿骨頚部骨折、変形性股関節症、大腿骨頭壊死症診断、インプラント機種推定などが報告されている。CT/MRI画像では大腿骨カム変形の自動検出、Delayed Gadolinium-enhanced MRIでの軟骨自動抽出などが報告されている。人工関節術後の短期合併症、入院期間予測なども報告されている。AIを単なる疾患や外傷の自動診断に使うだけでなく、従来解析が労力的に困難であったデータ量の多い研究に用いて新しい知見を得ようとする試みもされている。我々は、CTデータから筋骨格モデルを抽出するAIを開発し、骨格では表面距離誤差0.1mm、筋肉では表面距離誤差0.9mmの精度を達成した。片側罹患変形性股関節症44例の筋萎縮、脂肪変性の三次元解析を行い、患健比較で平均12%の筋萎縮とCT値で平均6HUの脂肪変性を呈すること示した。また術前の腸腰筋、大腿四頭筋、ハムストリング、内転筋の筋量減少、筋脂肪変性がWOMACのPhysical functional subscaleやJHEQ moving subscaleと相関することを示した。さらに、大殿筋の筋萎縮と変性、やハムストリングの筋萎縮、内転筋の筋変性が人工股関節全置換術後3週でのTime Up and Go Testと関連も示し、早期の回復予測が可能であることを示した。現在、国立情報学研究所との共同研究で1万人以上のCTデータを対象に骨形態、筋形態の自動計測システムを開発中である。単純X線画像からの3D形状予測、骨密度予測なども取り組んでいるので紹介する