2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 189_2
背景:乳がんにおける抗がん剤脱毛は,ほぼすべての抗がん剤で起こりうる副作用であることが知られている.しかし,乳がんにおける抗がん剤による頭皮の状態を定量的に評価した研究は見当たらない.目的:乳がんによる抗がん剤治療を受けた患者の脱毛頭皮と,健常者の頭皮の状態の違いを定量的に評価することを目的とした.方法:対象は,乳がんによる抗がん剤治療を受けた患者4名,健常者34名とした.USBマイクロスコープを用いて頭部画像を撮影した.撮影部位は頭頂部,後頭部,右側頭部,左側頭部とし,1名あたり4枚の頭部画像を取得した.頭部画像から毛髪部分を除いた画像に50×50 pixelsの関心領域(ROI)を6カ所設定し,トリミングを行うことで頭皮画像を取得した.これらの画像に対してグレーレベル同時生起行列(GLCM)を用いた特徴量解析を行い,脱毛頭皮と健常者の頭皮の特徴量を比較した.特徴量解析において,ステップは5 pixels,10 pixels,15 pixels,角度は0°,90°,180°,270°の値を平均して用い,均質性,明度・彩度,相関,逆差分,乱雑さを算出した.結果:GLCM特徴量のうち,均質性,明度・彩度,相関,逆差分では脱毛頭皮と健常者の頭皮の間に有意差が見られた.脱毛頭皮と健常者の頭皮の状態は異なると考えられる.考察:乳がんによる抗がん剤治療を受けた患者の脱毛頭皮と,健常者の頭皮の状態の違いを,GLCM特徴量を用いて定量的に評価できることが示唆された.