2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 231_2
腫瘍の周囲や内部に生じる新生血管は腫瘍細胞の増殖や転移に深く関与することが知られており,また新生血管の制御を治療戦略とする研究も多く報告されている.腫瘍の微小環境に依存して時空間的に変化する新生血管ネットワークの特徴を細線化処理等の画像処理法を用いて定量化する試みも報告されているが,精度向上に課題が残されていた.本研究では近年医用画像への応用が加速する機械学習を血管内皮ネットワークの特徴量抽出に応用した.ヒト臍帯静脈内皮細胞を4×104 cells/cm2の密度で基底膜マトリックスゲル上に播種した.18時間後に血管ネットワークが形成されていることを確認し,培地にCalcein-AMを添加して蛍光画像を取得した.血管の節および軸の位置と長さの情報を含む訓練用画像をMATLAB上で作成し,一般物体検出手法の一つであるFaster Region-based convolutional neural network (Faster R-CNN) に40 epochで学習させた.検証用画像10枚の解析結果を目視の解析と比較した結果,節の検出は検出率93.3%,精度89.8%を達成し,軸の全長計測では相対誤差を5.0%に抑制した.さらに低酸素環境で培養した新生血管は大気圧下の培養と比較して節の数,軸の全長ともに増加する傾向がみられた.学習の強化によってさらなる抽出精度の向上が期待され,また培養新生血管だけでなく生体内の腫瘍新生血管への応用も期待される.