2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 89_2
電気インピーダンストモグラフィ(EIT)は,外周に多数配置した電極から電流を印加し,測定したインピーダンスZから導電率分布σを画像再構成する方法である。近年、リンパ浮腫などの皮下細胞外液のσに時間・空間局所的変化が生じる疾患を非侵襲かつ高速に可視化する診断技術として期待されている。しかしながら、σの時間・空間変化が局所的に生じる場では、測定したZに及ぼす影響が非常に小さいため、高精度でσを可視化することは難しい。そこで本研究では、このような可視化の問題を解決するために、局所的変化を抽出可能なスパースベイズ学習(SBL)を用いた周波数差EIT(fd EIT)を提案した。提案手法は、ステップ1: ブロック化列ベクトルの形成、ステップ2:σの先験情報を用いた皮下脂肪識別、ステップ3:時間相関抽出から構成される。提案手法を評価すべく、健常者15名に対して長時間立位と脚拳上により下肢起立性浮腫を発生させる実験を行い、細胞外液の時間・空間局所変化の可視化を行った。空間平均導電率〈σ〉SATは、従来法である生体電気インピーダンス法(BIA)によるインピーダンス〈z〉BIAと強い正の相関を示し(相関係数0.715<R<0.957、n=15、p<0.05)、長時間立位時に減少し、脚拳上時に増加した。〈σ〉SATは皮下細胞外液のナトリウムイオン濃度変化と関連し、σの局所最大位置は大伏在静脈と関連していた。