生体医工学
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体外循環用遠心ポンプによる血液循環中の赤血球脆弱性の変化
矢野 哲也浅野 昂佑石塚 空
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2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 90_1

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抄録

緒言 連続流血液ポンプを通過する赤血球には高いせん断応力が負荷され,血球損傷が問題となることがある.本研究では,赤血球脆弱性に着目し,体外循環中のその変化について調べた.方法 リザーババッグと遠心ポンプ(SP4538X,テルモ)をチューブで接続した回路に,クエン酸ナトリウム抗凝固ブタ血液600 mLを充填し,ポンプ回転数と流路抵抗を調節して流量5 L/min,ポンプ差圧100 mmHgとし,血液温度を37 ℃に保って循環させた.循環開始後,予め定めた時刻に回路から採取した血液3 mLを遠心分離し,赤血球6 μLをリン酸緩衝生理食塩水1.5 mLに添加し,試料液を調製した.蒸留水0.50 mLを入れたキュベットにレーザ光を入射し,透過光パワーの連続計測を開始後,試料液1.0 mLをキュベットに注入した.試料液中の赤血球が浸透圧によって膨潤,崩壊することにより透過光パワーは増加する.透過光パワーの時間変化の速度が血球脆弱性を反映するものであることを事前に確認している.結果および考察 当初,血球脆弱性は循環時間の経過とともに単調に亢進することを予想したが,実際の結果はそれに反し,循環初期に見かけの脆弱性が低下した後に亢進する傾向を示した.試料液中の血球には加齢度の違いなどにより脆弱性の分布が存在し,循環初期段階で脆弱性の高い血球が崩壊し,見かけの脆弱性低下が生じた可能性が考えられる.結言 体外循環装置による循環中の赤血球の見かけの脆弱性は単調に亢進するものではない.

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© 2022 社団法人日本生体医工学会
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