生体医工学
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運動系列学習記憶の定量化による認知機能低下の判別
戸嶋 和也西谷 萌一寸木 佑田丸 司和坂 俊昭森田 良文
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2022 年 Annual60 巻 Proc 号 p. 295-297

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抄録

【目的】我々の研究グループは把握力調整能力評価トレーニングデバイス(以下,iWakka)を開発した.iWakkaは設定した目標値と把持力の誤差を検出するため,複数施行における時系列データから,高齢者の運動学習を定量化できる可能性がある.本研究の目的は,iWakkaによる運動学習の定量化が軽度認知機能低下者(Mild cognitive impairment : MCI)を判別する評価指標となるかを検討する.【方法】健常高齢者(以下,Normal Cognitive : NC群)10名とMCI群の10名を対象とした.iWakkaは視覚追従課題を提供する.視覚追従課題とは,把握力の目標線とiWakkaを操作することで得られる把握力の実測値との平均絶対誤差を定量化する.これをAdjustability of Grasping Force (以下,AGF)と定義する.今回はランダム課題とリピート課題を用いて,それぞれの課題に対する運動系列学習記憶を定量化する.それぞれの課題に対して,AGFの学習率を定義して比較した.加えて認知機能評価として,TMTA/B,FAB,レイ複雑図形の模写と遅延再生を評価した.なお,本研究は当院の倫理審査会の承認を得て実施した.【結果】それぞれの課題の学習率を比較すると,NC群ではリピート課題の方が有意 (p<0.01) に高かった.一方,MCI群では差が認められなかった.また,リピート課題において認知機能評価との相関を認めた.このことからiWakkaから得られる学習率は認知機能を表す可能性が示唆された.【考察・まとめ】iWakkaによる運動学習の定量化は,認知機能低下を判別するための評価指標となる可能性が示唆された.

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© 2022 社団法人日本生体医工学会
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