生体医工学
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日常での深部体温モニタリングに向けた貼付け型センサ
田中 雄次郎松永 大地田島 卓郎瀬山 倫子加藤 一聖永島 計
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2022 年 Annual60 巻 Proc 号 p. 312-314

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抄録

核心部温度(CBT)は我々の体調に密接に関係している.しかし,食道や直腸内のセンサを留置する従来のCBT測定はユーザの行動制限や負担が大きい.そのため,皮膚に貼りつけたセンサで測定した皮膚温と熱流束から1次元熱等価回路を用いてCBTを推定する手法が提案されている.この手法は風等によって核心部から皮膚へ流れる熱が散逸されると大きな誤差を生じるため日常での測定は困難である.そこで,我々は機械構造設計で注目されているトポロジー最適化を応用し,数学的根拠に基づき風等による熱の散逸を抑制するセンサ構造を提案し,数値解析やファントムを用いた基礎実験で効果を実証してきた.今回は健常者7名に対して提案センサの推定CBTと鼓膜温を比較することで推定精度評価を行ったので報告する.センサ装着部位を選定するため額・胸・腹の3か所にセンサを装着した.実験は気温28 ℃,湿度50 %の環境で実験参加者が安静にした状態、風(風速1 m/s)を当てられた状態、軽い運動をした状態で行った.胸や腹に装着したセンサは風や運動時に鼓膜温と1 ℃程度の大きな誤差を生じた.一方,額に装着したセンサは風や運動時でも鼓膜温を精度良く追従(相関係数0.96,平均自乗誤差±0.1 ℃)した.提案する貼付け型センサは額に装着することで風等がある環境でも高いCBT推定精度が得られ,日常での深部体温モニタとして高い実現性を有していることを示した.

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© 2022 社団法人日本生体医工学会
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