生体医工学
Online ISSN : 1881-4379
Print ISSN : 1347-443X
ISSN-L : 1347-443X
追加プローブなしで脳組織信号を抽出する「多重共役型」fNIRS技術の開発
山田 亨川口 拓之
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 Annual60 巻 Proc 号 p. 315-317

詳細
抄録

 機能的近赤外分光計測(fNIRS)は、プローブの頭表配置のため必然的に皮膚血流の影響を被る。対策として、通常配置よりも近距離に追加プローブを導入して近距離ペアで皮膚組織由来信号を計測して、通常配置の信号との比較から脳組織由来信号のみを抽出する多重配置法が従来から提案されてきた。しかし、追加プローブが装着器具の構成を複雑・重量化し、装着の手間や時間もかかるため現状では普及していない。 この欠点克服のために我々は、照射/検出兼用プローブ2本を用いて、双方向の通常fNIRS信号、および各プローブ単独での照射/検出によりプローブ直下の皮膚組織由来の信号を計測し、両者の重み付け差分によって脳組織信号のみを抽出する「多重共役計測法」を考案した。二分岐ファイバープローブと島津製作所OMM-3000を用いてシステムを構築し、プローブペアを前額部に装着して、上半身前屈課題を行った際の信号変化を計測し、皮膚血流の影響除去について検証を行った。 既知のとおり双方向の通常fNIRS信号は前屈により吸光度増大を示した。プローブ直下でもこれと非常に類似した信号変動を示したが、その振幅は1/100倍程小さかった。重み付け差分のノルムを最小化する係数条件では良好に前屈による信号変動が除去できた。その他、シミュレーション結果、実験から分かった技術実装上の課題も含めた報告を行う。"

著者関連情報
© 2022 社団法人日本生体医工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top