生体医工学
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心臓手術支援のための分光反射率推定を用いたマーカ領域の面積推定
安田 圭吾吉本 佳世高橋 洋介柴田 利彦高橋 秀也
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2022 年 Annual60 巻 Proc 号 p. 345-346

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抄録

僧帽弁閉鎖不全症の治療法の1つである僧帽弁形成術では,逸脱・膨張した弁を切除したうえで弁輪を支えるために人工弁輪と呼ばれる補強材料を直接弁に縫い合わせることで弁の機能を回復させる.人工弁輪のサイズは手術中に計測器具を挿入して決定している.しかし,近年盛んに行われている小切開低侵襲手術においては計測器具の挿入が難しいという問題がある.そこで本研究では,手術中にマーキングした領域の面積を術者に提示することにより,人工弁輪のサイズ選定をサポートするシステムを提案する.まず,ステレオ内視鏡から得たカラー画像から分光反射率を推定しマーカ部分を抽出する.マーカと臓器表面は分光反射特性が異なるため,波長ごとの反射率を用いることで精度よくマーカの部分の抽出が可能である.次に,ステレオ法を用いてマーカ領域の3次元情報を推定する.最後に,取得した3次元形状に基づいてマーカ部分の面積を算出する.提案手法の有効性を確認するために,カメラアングルを変えて撮影した画像から面積の算出を行った.設定した面積236,276,319mm2 に対して提案手法を用いて計測した面積は232±1.47,285±2.69,328±3.25mm2 であり,サイズ選定に十分な測定精度であることを確認した.このシステムにより,手術中に計測器具を挿入することなくサイズ選定が可能であり,手術時間の短縮が期待される.

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© 2022 社団法人日本生体医工学会
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