2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 129_1
外科手技の習得には、反復した一定の訓練などにより“自動化”した手技を行えるよう、徒弟制度的な訓練が必要とされる。外傷などでの損傷による微小な血管や神経を縫合するには手術用顕微鏡を用いたマイクロサージャリーは広く行われているが、その技術取得には一定のトレーニングが必須となる。一方、実臨床の場では近年術野を3Dでモニターに表示する外視鏡が利用可能となった。外視鏡を使用することで術者の頭部周囲が自由になり、映像の共有が可能となる。これを用いることで、頭部周辺に各種センサーを使用でき、“自動化”した“無意識下”の運動制御による手術手技を解析し、分析結果から人材育成、そして新規医療技術開発につながると考えた。実験として、熟練者・初心者を対象とし、外科手技用トレーニング血管を用いて6針縫合する手技を行った。初心者と熟練者、およびトレーニング後の初心者の視線・姿勢・器具の動きに関して解析した。作業全体で縫合時間・視線/器具の動き・瞳孔が初心者で大きくなっていた。自然災害が頻発する日本では重度外傷患者が多数発生する可能性は否定できず、マイクロサージャリーにも対応可能な医師を育成することは重要となる。今回の結果から、初心者と熟練者の手技に対する習熟度の違いは視線運動などに関連していた。これらの違いを医師育成・手術用ロボット開発に活かせられると考えられた。