生体医工学
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高齢者の足部骨格計測システムの開発と歩行によるアルツハイマー病予防
山下 和彦山下 知子佐藤 満
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2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 143_1

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抄録

 6割以上の高齢者の足部や足爪には外反母趾,回内足,巻き爪,肥厚などの様々な問題が発生している.要介護2では50%,要介護3以上では90%以上の対象者が爪や足指の変形により爪切りができない状況にある.これが外出を阻害し,身体機能や認知機能の低下につながり,睡眠障害と要介護の重症化リスクを高めている. 本研究ではスマートフォンを用いて足部の外観から骨格を評価するシステムを開発し,2,000人の大規模調査から外反母趾や回内足,変形性膝関節症のリスクを評価してきた.さらに,ICT活動量計を用いた歩数,活動度モニタリングシステムを開発し,5,000人を対象に大規模コホート研究を実施している.ここでは足部や足爪ケアを指導し,足部の健康維持・向上を図りながらウォーキングを進めている.評価項目は下肢筋力や足部骨格などの身体機能,歩数や外出頻度などの活動度,レセプト分析による医療費と疾病構造の変化,アンケートによる自覚的健康度の変化である. 成果の一例として,75歳以上を5年間追跡した介入群(257人,介入開始時:79.7±2.7歳)と対照群(641人,79.5±2.7歳)のアルツハイマー病の新規疾病発症率を調べた.その結果,Risk Ratioが6.13であり,足部のケアを進め,本システムを実施することでアルツハイマー病の発症予防の効果が推察された.

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© 2023 社団法人日本生体医工学会
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