生体医工学
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高齢者の転倒予測における足底触覚閾値の有用性
佐藤 満山下 和彦山下 知子
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2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 143_2

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抄録

[背景] 高齢者の転倒予測に寄与する測定変数の多くは,運動介入の継続によって成績が向上し,予測能力を低下させる恐れがありながら,その影響は十分に解明されていない.自立支援や介護予防事業で計画的な運動プログラムに参加している地域在住高齢者の将来の転倒を予測する身体的・心理的要因を明らかにすることを研究目的とした.[方法] 介護保険もしくは総合事業で通所介護施設を利用している地域居住の高齢者124名を対象に,転倒リスクをいくつかの身体的・認知的な評価手段を用いて評価した.12ヶ月のフォローアップ期間中の転倒者と非転倒者の間で,測定されたすべての変数を比較した.それぞれの変数と転倒の関係は,転倒事象の有無を目的変数としたロジスティック回帰分析により決定されたオッズ比により検討された.[結果] 測定後12ヶ月まで継続してサービスを利用した87名が最終解析に含まれ,そのうち50.6%が転倒者であった.足底触覚閾値(PTT)は非転倒者と比較して転倒者で有意に高かった.さらに,PTTは12ヶ月後までの転倒を説明する最も強い予測因子であった(オッズ比,1.20;95%信頼区間,1.02-1.42).この結果は神経疾患の既往の有無で調整しても同様であった.[考察] PTTは継続的な身体運動介入に参加する高齢者にとって有効な転倒予測因子であり,転倒リスクを判断するための既存の評価戦略の有用性を高める可能性がある.

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© 2023 社団法人日本生体医工学会
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