2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 166_2
我々は、低侵襲なレーザー皮膚治療の開発を目指し、近赤外パルスレーザー照射によるラット真皮中コラーゲン密度の変化の定量評価を行った。現行のレーザー皮膚治療では、真皮中の水を主な吸収体とした光熱作用により、皮膚の質感やしわの改善が見られるが、線維芽細胞や神経細胞の熱的障害と痛みなどが問題である。我々は、コラーゲンの吸収係数が水の吸収係数を上回る近赤外波長のSelective Photothermolysisを応用し、コラーゲン選択加温による熱的障害を抑えた低侵襲皮膚治療を提案している。
本研究では、レーザーのパルス照射によりコラーゲンを選択的に加温することで、低侵襲にコラーゲン発現量を増加させる照射条件を明らかにすることを目的とした。麻酔下でラット腹側皮膚に対し、現行のレーザー皮膚治療に用いられているCO2レーザーおよび波長1480, 1550, 1690 nmの近赤外パルスレーザーを照射した。照射条件はピークパワー1 W/cm2、パルス幅100 µs、照射時間5 min、放射照射量60 J/cm2とした。光照射3日後に犠牲死させ、摘出した皮膚組織からマッソントリクローム染色標本を作成した。レーザー照射部位および非照射部位のコラーゲン密度を定量化し比較するために、RGB画像を用い、真皮領域のBlue成分の平均輝度を指標とした画像解析を行った。波長1500 nmのレーザー照射によるコラーゲン平均増加率は28%とCO2レーザー照射時の20%を上回る結果が得られ、皮膚表面に熱的損傷をきたすことがなく低侵襲であったことが示唆された。