2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 166_1
乳がん治療後の乳房再建術中における再建乳房形状の定量的な評価手法は未だ確立されていない.我々は健側乳房と再建中乳房の局所の体積差を導出する再建術中支援システムを開発してきた.しかし臨床評価において,形状差を定量的に術者へ提示できる反面,画像処理工程が多く計測から投影に掛かる時間がかかる点,また,画像処理ソフトウェアのインターフェースが複雑で操作に習熟が必要という点が課題として明らかとなった.そこで本研究では解析処理を見直し,再建乳房の3D形状差情報をリアルタイムで導出するシステムの開発を目的とした.開発環境はVisual Studio2022を用い,3DセンサにはAzure Kinect DK(Microsoft社)を用いた.開発したシステムでは画面上で一度患者正中線を指定すると,アフィン変換,左右反転,形状差導出の順で処理を自動で行い,リアルタイムで左右乳房の形状差情報を導出・提示する.ライフサイズマネキンを用いた評価実験において形状差導出精度は従来機器とほぼ同等でありながら,従来15~30分掛かっていた乳房形状差作成処理に掛かる時間は約0.33秒と短縮化したことでリアルタイム形状差導出が可能になった事を確認した.さらに実際の再建術中の臨床評価実験を行い,従来の手術工程を大きく妨げることなくシステム使用可能なことを確認した.